【セミナーレポート】『続・しなやかに、生きる。みんなのストレス波乗り術~臨床心理学の現場から~』

『続・しなやかに、生きる。みんなのストレス波乗り術~臨床心理学の現場から~』

鳥取県地域若者サポートステーションオンラインセミナー

 

2024年1月30日、鳥取県地域若者サポートステーションでは、オンラインセミナー『続・しなやかに、生きる。みんなのストレス波乗り術~臨床心理学の現場から〜』を開催しました。

 

講師は、鳥取大学大学院 教授の竹田 伸也さんです。「生きづらさを抱えた人が、生まれてきてよかったと思える社会の実現」を目指し、臨床心理学・認知行動療法の研究や臨床、教育に取り組んでいらっしゃいます。

 

今回のセミナーでは、親しみを込めて竹田先生を「しんやさん」とお呼びすることになりました。「波乗り術」をイメージさせるマリンボーダーの洋服で登壇してくださったしんやさん。落ち着いた声で丁寧に、ストレスやマインドフルネスについて解説してくださいました。

 

受講したのは、求職中の方や支援機関など約130名のみなさんです。当日の様子をレポートします。

 

「最強のストレス波乗り術とは?」ーーストレスという荒波をなくすことはできる?ーー

 

今回のセミナーのテーマは、どうすればストレスに上手に対処できるかを考えることです。しんやさんは「人生とは本当に思うようにならないもの、それが基本パターンなのだな」と理解していると言います。人生からストレスをきれいさっぱり無くすことはできないのです。

 

しんやさん:自分が鋼のような強い人格になれば、安定した人生を送れると思いますか?鋼の船は、穴が空いてしまうと沈没してしまいますよね。「動じない心を作り上げた」と思ってしばらく維持できても、次にやってくるのは「この安定感をいつまで維持できるのだろう」という不安です。

 

そこで、しんやさんは、「発泡スチロールの船のような心を作ってみては?」と提案。そうすることで、ストレスという荒波に揺れはしても沈むことはなく、飄々とやりこなすことができます。苦しくても悩んでいても、船が沈む恐怖からは解放されている状態になるのです。

 

つまり「最強のストレス波乗り術」とは、ストレスの荒波に対して、戦わず、避けず、ただそこにあるものとして受け流し、のりこなすことです。そして、この理想的な心の状態を育てるためにぴったりなのが今回のテーマの「マインドフルネス」です。

 

 

マインドフルネスでありのままを味わうーー思考を「自動運転」から「マニュアル運転」へーー

 

まず、しんやさんが紹介したのはご自身が登壇する研修会でのエピソード。機器の接続トラブルが起こり、開始が45分も遅れてしまったそうです。予測できない事態に対して、たいていの人は「話を聞きたいと待っている人がいる」「時間をかけて資料をつくってきたのに」など、さまざまな思いが湧き起こり、イライラしてしまうもの。

 

しんやさんも、たくさんの考えが頭をよぎったそうです。しかし、感情の波に大きく揺さぶられることはなかったと言います。それは、しんやさんが心の状態をマインドフルに眺めることができていたからなのです。

 

ここで、1分間の呼吸を感じるエクササイズを実践して、マインドフルネスを体験する時間を持ちました。自分が、最も呼吸を感じられる体の場所に意識を向けて、ただひたすら呼吸に注目してみます。

しんやさん:1分間、呼吸から注意や意識が逸れなかった人はいらっしゃるでしょうか?多くの方は「ほかのことを考えていた」「眠くなり、うとうとしていた」というように、呼吸から意識が離れたことに気づかれたのではないでしょうか?

日常生活でも、食事の味をしっかりと味わえていなかったり、家族との会話にじっくりと耳を傾けられていなかったりすることがあります。このように、今をありのまま十分に味わえていない状態になるのは、「思考が自動運転」しているからだと、しんやさんは言います。

また、 過去を後悔したり、未来を思い悩んだりしていても、今をありのまま味わうことができません。「思考が自動運転」をしていると、怒りや嫉妬、恐怖で心が満たされてしまい、知らず知らずのうちに自分を傷つけています。

しんやさん:わたしたちの人生には、本当に幅広くいろいろなことを体験できるだけの力が与えられています。苦しいことだけで胸をいっぱいにするよりも、主体的に生きるために「思考のマニュアル運転」の技術の力を磨いていきませんか?

「自動運転の思考」を「マニュアル運転」に切り替えるため磨くと役立つ技術がマインドフルネスです。

 

マインドフルネスとは?ーー思考へこだわりを伴わない気づきを向けるーー

私たちは、ネガティブな考えやことばに苦しめられることがあります。しかし、考えやことばは現実ではありません。「マイナス思考をことばの産物としてありのまま眺めることができれば、マイナス思考の毒性が抜き取られる」と、しんやさんは解説します。

マイナス思考と現実との、認知的な結びつきを断ち切るのがマインドフルネスのはたらきの一つ。マインドフルネスとは、気づきが行き渡った状態のこと。生まれてくる思考に対してこだわりや評価、判断を伴わない気づきを向けることです。

しんやさん:臨床場面では、マインドフルネスに取り組むと「時間軸の反復横跳びが上手くなりますよ」と説明しています。今この瞬間から気持ちが離れてしまって未来や過去に意識が向くことで、不快な感情が湧き起こっているわけです。それ自体は人間の自然な営みなので、なんら問題ありません。

 

ただ、そこにずっと囚われているのではなく、「ネガティブな先読みをして不安になったことに気付いたら今に戻る」「過去のことを後悔したり、腹を立てたりしていることに気づいたら今に戻る」というようにマインドフルネスを取り入れ、現実を等身大に受け入れるようにしてはどうでしょうか。

 

つまり、マインドフルな心の状態とは、良し悪しの判断を下すことなく、今ここでの体験を味わうことができている状態です。

 

「マインドフルネスをする時の態度」として、しんやさんが取り上げたポイントは次の5つ。

しんやさんは、車窓から見る風景のように感情を眺めると「苦しみを鵜呑みにすることや、苦しみ避けようと悩む状態からも、距離を置くことができるようになる」と、解説しました。

 

では、マインドフルネスに取り組むとどんな変化が起こるのでしょう。しんやさんご自身は、食事をおいしく感じることができるようになったと言います。

 

しんやさん:以前は、何かを見ながら食べていたり、考え事をしながら食べていたりという状態でした。しかし、今は食べているものに気付きを向けているので、風味や味わいが存分に伝わってきます。

 

「マインドフルに味わう」とは、判断や評価をすることとは異なり、しっかりと現実のありのままを「受信する」ということ。マインドフルネスを心掛けることが、自分の体験を丁寧に受け取る力を育てることにつながります。

 

もちろん、就職や仕事の場面でもマインドフルネスは役立ちます。

 

しんやさん:就職の面接を受けるときは、とても緊張しますよね。緊張している時に「うまくいかなかったらどうしよう」「面接官からどう思われるだろうか」と、意識が内向きに閉じた状態になると、辛くなる一方ですよね。

 

一方、マインドフルネスに自分の心を見つめ「自分は、すごく緊張してるんだな」「面接官に悪く思われたらどうしようって思ったんだな」と、自分のありのままの状況に気づくと、どんどんと現実の体験に開かれていくことができます。

 

 

今この瞬間を味わう「マインドフルネス呼吸法」

 

「マインドフルネスに取り組もう」と思い立ったら、まず5分程度からスタートし、徐々に時間を伸ばすことをおすすめします。しんやさんも、最初はマインドフルネスをする30分を長く感じていたとのこと。しかし、マインドフルネスのセンスが磨かれると、今この瞬間のありのままに気づくことができ時間を短く感じるようになったと、ご自身の体験を話してくださいました。

 

ここで、参加者のみなさんも2分間の「マインドフルネス呼吸法」を体験しました。しんやさんが紹介した「マインドフルネス呼吸法」の手順は、次の通りです。

初心者からベテランまでできるのが、「マインドフルネス呼吸法」の特徴です。体が望むように呼吸させ、呼吸に注意を向け味わいます。注意が逸れたら、こころの働きをねぎらって「おつかれさま」と声をかけ、ゆっくり呼吸に戻りましょう。

 

「マインドフルネス呼吸法」は、集中力や、持続性注意を高める効果もあり、勉強や仕事の目標を達成することにもつながります。

 

また、こころの不調にも効果をもたらすとして、しんやさんが紹介したのが「こころをオープンにするマインドフルネス呼吸法」です。

 

まず背筋を伸ばし体の力を抜きます。そして目を閉じて、呼吸に注意を向けて観察します。同時に心の中にも注意を向け「何を考えているかな?」「何を感じている?」と、考えや感覚にも気づきを広げていきます。また、いたみ・かゆみ・こわばりなどの体の感覚や、部屋の中と窓の外の音・温度・匂いにも注意を向けます。

 

しんやさん:マインドフルネスによって、注意の幅を広げると気づきの幅が広がり、つらい状況から離れる力を養うことができます。良い体験も良くない体験もマインドフルに受け取り、人生の全ての体験に自分が開かれていくのです。

 

またマインドフルネスは、自分でオリジナルワークを考え、食事・歯磨き入浴・歩行などの日常のあらゆる体験に取り入れることも可能です。

 

しんやさんは、大学への行き帰りに「今日は香りに注意を向けてみよう、どんな香りが感じられるかな?」「今日は音に気づきを向けてみよう」「足の裏はどんな感じかな?」などと観察し、マインドフルに歩くことに取り組んでいると話します。

 

このようにくらしの中のさまざまな体験を、マインドフルネスのセンスを磨くために使うことができます。

 

簡単にできるマインドフルネス的くらし

最後にしんやさんが紹介したのは、くらしにマインドフルネスを取り入れるための2つのポイントについて。

 

  1. 今を十分に味わう

今、自分が大切にされていることや、満ち足りていることにマインドフルに意識を向けることができると、幸福感が高まります。「テレビやスマホを見ないでご飯を食べる」「料理の香りや彩りも味わう」「入浴時にはマインドフルに頭を洗うなど」の工夫を取り入れると、今この瞬間に意識を向けることができるようになります。

 

  1. 良い悪いの評価をすぐにしない

実際のところ、人はいろいろなことを豊かに体験しています。たとえば中海の夕日の綺麗さはことばでは表現できないほどだと、しんやさん。しかしことばにすることで評価が加わり、体験が矮小化されてしまうのです。カラフルな世界を存分に味わうには、評価をすぐにしないことが大切です。

 

また私たちの価値観や判断基準は、損得や効率的かどうかなど世の中の市場原理に影響されています。

 

しんやさん:一度しかない人生、人の感じ方は果てしないものです。市場原理で人生を評価することが、我々を豊かにしてくれるのでしょうか?市場原理に振り回されず、「もっとのびのびと生きてもいいやんか」と、最後にお伝えしたいと思います。

 

今回のセミナーでは、しんやさんのガイドに沿ってマインドフルネスを体験しながら、ストレスをしなやかに乗りこなす「ストレス波乗り術」を学ぶことができました。日々のくらしを豊かに味わうヒントや、就職の面接・職場で感じるストレスに対処するヒントを得ることができたのではないでしょうか。

 

明日からのくらしや、仕事へと新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれる、温かい雰囲気にあふれたセミナーになりました。しんやさん、受講してくださったみなさん、ありがとうございました。

 

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